| [南リアス線編] | ||
|---|---|---|
吉浜 「児童館?」 |
||
自動ドアの向こうは広々とした小ぎれいなホールだった。磨かれた床。木のベンチ。奥には本棚。誰かが寄付した絵本を、おばあちゃんが孫に読み聞かせる。子どもたちが追いかけっこする。 「あっ、来た」。本棚の向こうに列車が滑り込んできた。 「近くに子どもを遊ばせる場所がないので、幼稚園から帰ると、ここに遊ばせに来ている」と母親。壁には小中の学校便り。まるで児童館だ。 大船渡市吉浜地域振興出張所の木川田末男所長(59)の家もすぐ近くだが「うらやましい。うちの子が小さいときにできてたらよかった」。 吉浜は「無人駅」だが、周囲はにぎやかだ。 名産のアワビから名づけられたこの「きっぴんセンター」は10年目。市出張所や集会場の他、2階には「怠け者はいねが」で知られる伝統行事スネカの衣装がしまってある。診療所も隣にある。 駅前にはマイクロバスがひと休みしていた。車体には「スクールバス」と書いてあるが、地域の公営バスがなくなった3年前からは、住民をタダで運んでくれる。駅を起点に朝6時半から夕方まで、託児所、小中高校生、病院・診療所への足と、1日6路線。年間延べ2万2千人が利用する。 「さ、行くか」。駐車場で一服していた佐藤安平さん(61)が腰をあげた。吉浜の人だから、だれがどこから乗ってどこに送り届けるか、ちゃんと心得ている。駅で遊ぶ孫の世話を娘に任せ、託児所のお迎えに出ていった。 |
||
| (5/31) | ||
| この記事は朝日新聞社の許諾を得て転載しています。無断で転載、送信するなど、朝日新聞社の権利を侵害する一切の行為を禁止します。 |
吉浜駅 (よしはま)
●愛称:「キッピンあわびの海」~吉浜のアワビは乾鮑として江戸時代から中国に輸出された高級食材であることから(キッピンアワビ)~
駅の近くにある旧吉浜郵便局は、明治7年6月に開局された歴史と伝統のある郵便局。
正寿院(寺院)は、気仙大工の建造物。
吉浜出身の水上助三郎は、大正時代にオットセイ猟で巨富を築いた。吉浜のアワビを買い取り、中国へ干鮑輸出を行い、「キッピン鮑」の名声を高めたことでも有名である。
